ムクドリノート 11
「四月の恋」〜「画」の浮かぶ、完結した春の歌』
作詞作曲 八野英史
文章 日下部将之
リリースとしては昨年の「永遠の59秒目」以来、ということになるんだけど、
あれは「動物園へ行こうよ」共々リテイクだったので、純粋な新曲という意味では2012年の「つまらない大人になってしまった」以来ということになる。ただし、曲そのものは10年以上前に出来ていたもので、純粋な新曲と呼べるのかは良く分からない(デモは八野氏のマイスペースに公開されていた)。まあ、いいか、そういう話は。
いずれにせよ、のんびりしたペースながら、コンスタントに作品がリリースされることが重要。
エキゾチックさを想起させるストリングス、要所に配されるホーン。
隠し味的にトラック全体をまろやかにするウクレレに、チェンバロ(ハープシコードかな?)。ゆったりと抑揚をつけつつ、過度に派手になったりしないところが実に大人の仕事。侘び寂び、古都の風景のような音像。
そう言えば、英語タイトルは「April in Kyoto」。この英語タイトルの着想、おそらくカウント・ベイシーの「April in Paris」が意識的であれ無意識的であれ影響してるのではないかと思うけど、あの偉大なビッグバンドのゴージャスさとは違い、同じくホーンが入るとはいえ、bのこれはA&Mレコードのそれへのオマージュに聴こえる。
更に突き詰めれば、音像はバート・バカラックのそれへのリスペクトだと思う(と、あえて断言)。だからこそ、だろう。この曲は良質な、古の名作映画の主題歌のような、いつまでも忘れ難い美しさを讃えてる。
暖かな春の、静かな午後。小さな川のほとり、水面に浮かぶ桜の花びら。誰にも邪魔されることのない、ささやかでいて揺るぎない想い。
メロディーが、トラックが、聴き手の脳裏に鮮やかな映像を映し出す。
今回のリリース、あくまで1曲のみだったが、結果的に正解だったと思う。
この曲は前後に他の曲を必要としない。この曲だけで、4分59秒で、完結している。
ただ、完結しているが故に、そう遠くない先にアルバムリリースの際に、この曲の置き方は相当苦慮するだろうな、とも思う。それは「つまらない大人になってしまった」も同様なのだけど、bがアルバムにおいてこちらの懸念をどう切り返してくるか、楽しみにしている。
それまでは暫し、この完結した1曲を楽しんでいよう。
b-flower「四月の恋」購入については、こちらをご覧ください。
http://s.ameblo.jp/clover-chronicles2/entry-11993773905.html
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